創造情報学専攻 専門科目の分野別参考書と対策法

2020年2月27日

東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻で出題される分野の個人的対策法をまとめてみました。創造情報学専攻は出題分野が多岐に渡るため、戦略的に勉強することが大事だと思います。

基本方針

洋書で勉強しない

基本的には洋書(とその邦訳版)を参照しないことにしていました。ほとんどの洋書が分厚く、知識がコンパクトにまとまっているものが少ないからです。洋書は演習問題が充実しており、理解が深まるという利点はあるものの、全問題を解くと時間がかかり、問題の取捨選択も難しいという欠点があります。また、演習問題が必ずしも院試に出るとは限りません。日本のペーパーテストに出やすい問題の傾向とは異なっている可能性があります。

創造情報学専攻以外の院試問題を集める

創造情報学専攻の専門科目の過去問は公式には5年分しか公開されていません。更に毎年分野にばらつきがあることから、分野ごとの演習量が足りなくなります。そこで、東京大学やそれ以外の大学院の院試問題を集めることから始めました。

基礎の基礎の勉強

コンピューターサイエンスの基礎

コンピューターサイエンスに関する知識がほぼゼロだったため、YouTube動画を見て基礎知識をつけました。イラストがふんだんに使われており、非常にわかりやすいです。基礎をざっくりとつかめるので、教科書が読みやすくなります。

よく勉強していた分野

コンピュータアーキテクチャ

対策記事では坂井先生のコンピュータアーキテクチャの本がよく挙げられていますが、酒井先生の本はとっつきにくい印象がありました。まず、森北出版の入門書を10月あたりから読み始めました。

当時は第2版でしたが、3版になってから2色刷りになりました。きれいな図が豊富なため、入門書としては非常に良くできていると思います。演習問題は「〇〇と△△の違いを説明せよ」というものが多く、語句説明対策に役立ちそうです。過去問中心に学習していたため、演習問題はそれほど解いていません。

次に、定番の坂井先生のコンピュータアーキテクチャ本を12月に読みました。演習問題はそれほど解いていません。創造情報学専攻対策としてはこの坂井先生の本を完璧にすることが大切だと思います。

坂井先生の本は東大の授業の教科書であるため、1月にはすべての所蔵館で貸出中となり、図書館で借りることができなくなりました。

総合分析情報学の出題範囲は更に広いこともあって、結局直前期にはオーム社の本を繰り返し読みました。記述が簡潔なため、初学者には向いていないと思います。

オペレーティングシステム

オペレーティングシステムは、松尾先生(といっても某ディープラーニングの先生ではないです)の本を中心に読んでいました。院試に出る内容に絞って丁寧に書かれてあり、2色刷りで理解しやすいです。各章のまとめが語句説明問題対策に役立ちます。10月から繰り返し読んでいました。

松尾先生の本で書かれていない部分を確認するために、以下の共立出版の本も参考程度に読んでいました。11-12月頃に読んでいました。スケジューリングやプロセス間通信などの知識が充実しているという印象です。

総合分析情報学のオペレーティングシステム分野の範囲が広いため、総合分析情報学の試験当日には図書館でコロナ社の本を一読しました。記述が簡潔すぎるために初学者には向かないと思います。

アルゴリズムとデータ構造

アルゴリズムとデータ構造に関しては、理論系の本よりも実装系の本を使うのが圧倒的に理解が進むと思います。いわゆる螺旋本を一通り実装するのが良いでしょう。プログラミング試験対策にもなります。12月に一通り実装しました。

五十嵐先生の本も利用しましたが、図書館の本は第1刷で誤植が多く、また説明がかなり省かれており、それほど使いませんでした。文字列探索のKMP法やBM法では、スキップ量の算出方法が書かれていないため、特にわかりにくく感じました。

わかりにくい箇所はインターネット上の記事やyoutube, wikipediaを参考にしました。特に、ソートアルゴリズムの計算量の導出方法はwikipediaを頼りに学習していました。

ネットワーク

総合分析情報学ではネットワーク関連の問題が毎年出題され、かなり知識も必要とされるため、重点的に対策していました。youtube動画を見て全体像を掴みました。

共立出版の本は基本情報・応用情報技術者試験におけるネットワーク分野の知識が網羅されており、詳しく丁寧にかかれているためおすすめです。12月-1月にかけて集中的に読んでいました。

創造情報学の語句説明問題では、基本・応用情報技術者試験レベルのセキュリティ用語が出る傾向にあります。ネットワークセキュリティ用語の説明に関してはこの本で万全だと思います。

論理回路

私がおすすめする本は浜辺先生の「論理回路入門」です。2色刷りで初学者にもわかりやすく、組み合わせ回路・順序回路ともに網羅されています。11月頃に読みました。

院試対策の本として坂井先生の「論理回路入門」がたびたび挙げられていますが、初学者用の本としては不向きだと思います。詳しいことは詳しいのですが、どこも同じトーンで解説がなされているため、どこを飛ばして読み、どこをしっかり読めばいいのかがわかりにくいです。演習問題の数が豊富なので2冊目に利用しました。

参考程度に勉強していた分野

機械学習

機械学習に関する基本的な知識はもともと身についており、語句説明問題は対策しなくても大丈夫だろうと踏んで、それほど対策していません。個人的に主成分分析・カーネルトリックの仕組みをしっかり理解したいと思ったため、はじめてのパターン認識の主成分分析・カーネルトリックの部分を一読しました。一読しただけなので、自力で導出できるレベルまでにはなっていません。

コンピュータグラフィックス

コンピュータグラフィックスの教科書として、画像情報教育振興協会のものと森北出版のものを挙げます。

画像情報教育振興協会の教科書はフルカラーで知識が網羅されている一方、どこが重要なのか、あるいは試験問題としてどのような問題が出るのかがわかりにくい印象にありました。

私が主に読んだのは森北出版の教科書です。この本は紙とペンで解くタイプの演習問題が付属しており、ペーパーテストではどのような問題を出すことができるのかを把握することができました。計算(数学的)問題としては、同次座標系の問題が出やすいのではないかと思っていました。この本を読むと、語句説明問題として曲線・隠面処理・表色系・シェーディングの種類くらいしか出せなさそうだということがわかりました。各章の最後にまとめがついているため語句説明問題に役立ちます。

情報理論

情報理論で読んだのはこの本だけです。導出過程が丁寧でとてもわかりやすい。

2019年度冬院試では第1問でハフマン符号などの範囲が出たようですが、出題傾向から考えると、ハフマン符号の知識がなければ絶対に解けないという問題は出題されない気がします。過去にエントロピーを基準とした決定木の分割が出題されましたが、たとえ知識がなくても考えれば解ける問題という印象でした。

ロボティクス・制御

創造情報学でたまに出題される分野です。正直対策が手薄だったため、今年度の大問1・2で出題されず、ほっとしています。

語句説明問題ではこの分野はかなり頻繁に出題されているという印象があったため、過去の出題実績から、次の条件を満たす本を東大の図書館で探しました。

  • ゼロ・モーメント・ポイント(ZMP)に関する記述がある
  • 力制御、フィードバック制御に関する記述がある
  • 運動学、逆運動学に関する記述がある

この条件を満たす本としては「概説ロボット工学」が挙げられます。第2章で制御理論、第3章でロボットアームの運動、第4章でロボットの歩行が説明されており、各章末に語句説明問題があります。ロボット・制御分野に関しては、各章末問題にある語句説明問題を対策しておくと良いかもしれません。私はロボット・制御分野の説明問題は記憶できず捨てていました。

制御理論・ロボットアームの運動について易しく書かれた本としては、「絵解きでわかるロボット工学」があります。10月くらいに逆運動学の計算方法をさらっていました。

信号処理

信号処理に関しても勉強はしましたが、試験当日までに戦力になるような知識に成長させることができていません。創造情報学専攻担当で信号処理関連の分野を研究しているのは猿渡先生くらいだと思い、猿渡先生のホームページにある講義資料を眺めていました。

http://www.sp.ipc.i.u-tokyo.ac.jp/~saruwatari/

フーリエ変換・カルマンフィルタ・ウェーブレット変換あたりの説明問題はこの講義資料を参考にすれば対応できそうです。

東大の電気系の授業で使った教科書も持っていたので、それも眺めていました。過去の語句説明問題では隠れマルコフモデル、tf-idfが出題されていますが、この教科書にその説明は載っています。tf-idfは信号処理というより自然言語処理の話題ですが……。

(ほぼ)勉強していない分野

離散数学

結局ほとんど対策はしませんでしたが、離散数学の分野でペーパーテストに出そうな問題がたくさん載っている本を挙げておきます。たくさん演習をしておきたい人はこの本がよいと思います。

言語理論

ほとんど勉強していません。正規文法・文脈自由文法・文脈依存文法をインターネットで調べて覚えようとしましたが、結局間に合っていなかった気がします。

数値計算

全く勉強していません。

第1・2問対策

第1・2問は、院試らしい問題が出題されることが多いです。コンピュータアーキテクチャ・アルゴリズムの問題が出題されることが多いです。それ以外にも幅広い範囲から出題され、すべてを完璧に対策することは不可能です。

最近では「知っていれなくてもよく考えれば解ける」問題が出題される傾向があります。その分野を知らなくてもよく考えれば解けるのですが、知識があると解きやすく有利になるため、幅広い分野の院試問題に触れておくことが重要だと思います。

弁理士の試験問題

語句説明問題対策

創造情報学の最終問題では、

以下に示す情報システムに関する8項目から4項目を選択し、各項目を4〜8行程度で説明せよ。必要に応じて例や図を用いてよい。

東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 過去問

という語句説明問題が出題されます。

どのような語句が出るのかがわからなかったため、出題されそうな語句を集めることから始めています。具体的には、

  • 語句説明問題の出題されている東大大学院の過去問
  • 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験の参考書
  • 弁理士の試験問題

で出題されそうな語句を調べ、Google Spreadsheetにまとめ、自分なりの説明を書いていきました。といっても、十分な対策ができずに試験当日を迎えてしまったのですが……。

語句説明問題の出題されている東大大学院の過去問

情報理工学系研究科以外で、語句説明問題が毎年コンスタントに出題されている大学院は、私が調べた限り次の研究科・専攻です。東京大学以外の大学院では見当たりませんでした。

  • 学際情報学府 総合分析情報学専攻
  • 新領域創成科学研究科 環境学研究系・社会文化環境学専攻
  • 総合文化研究科 広域科学システム科学系

基本情報技術者試験・応用情報技術者試験の参考書

基本情報技術者試験・応用情報技術者試験の参考書の特典としてついてくる単語帳アプリ問題を参考にするのも有効だと思います。インプレス社の参考書は、購入者特典としてWeb上で使える単語帳アプリ「でる語句200」がついてくるためおすすめです。

弁理士の試験問題

弁理士の試験問題では、各分野で毎年語句説明問題が出題されています。過去問が豊富なのと、情報科学の各分野ごとに語句説明問題が出題されているため、出題される語句が何なのかがわかってきます。

語句説明問題対策の注意点

語句説明問題では、各項目を4〜8行程度で説明することに注意する必要があります。

ある語句が4行未満で十分説明できてしまう場合、その語句は出題されないか、他の語句と比較して説明する必要があることになります。弁理士の試験問題では、かなりマニアックな(創造情報学では出題されない)語句が出題されるので、取捨選択に注意しましょう。